(5) 犯罪行為ギリギリの変質者

ここには、一人の変質者が出没する。その変質者は、人出の多い日曜日に見かけることが多い。プール棟と屋内運動場を結ぶ通路で、小学生の女の子であろが、とにかく若い女性でありさえすれば目星にし、タイミングを見計らい、そのターゲットを一旦追い抜いた後、Uターンしすれ違いざまに正面から近寄り顔を舐めるように睨みつけて通り過ぎる行為を繰り返すのである。その後、プールに場所を変え、歩行コースで女性とすれ違いざまに睨んだり、水中に潜り背後から泳ぐ姿や歩く姿をガン見するのである。でも決して触りはしないのである。中には、気配を感じて気持ち悪がって逃げ出す子供や、恐怖のあまりそのままプールを後にする女性もいたりするのだ。時には若い男性の監視員が、その変質者に威圧感丸出しで睨みつけられ委縮している場面も目撃した。やっている最中は、興奮しているのか傍若無人の振る舞いではあるが、ギリギリのところで止めて、スーッと立ち去るのである。そして、まったくその気のないような体で、温泉に浸かりながら次のチャンスをうかがっているのである。

 

 

 

先日、中学生の男女が変質者に殺害された事件があったので、このことを南署に通報したことがあるが、まったく取り合ってもらえなかった。舐めるように睨んだとしても、水中で背後から潜り近づき後姿をガン見しても、いずれもそれらは「見る」という行為であって、すべてこれを犯罪として取り締まるには限界があるというのである。取り合わない言い訳としか聞こえない。(正論なのかもしれないが、逃げ口上に聞こえなくもない。)

逆にその変質者は、取り締まる側の甘さを見透かし、犯罪ギリギリのところをハッキリ意識していて、絶対に犯罪者扱いされないことを確信しているのではなかろうか。将来、もしその変質者が尻尾を出すことがあるなら、せめて目撃者として証言することは辞さないつもりではいる。