(14)監視員の在り方

数年前にプールの運営業者が代わったのは分かった。それに伴い総合受付と売店の従業員の顔ぶれも変わり、プールの監視員の何人かがいなくなり何人かが新しくもなった。もっとも特筆すべきは、新しく入った監視員のひとりが、他の監視員に対し模範的な監視の仕方を態度で示そうと努力しているのが日々伝わった。それは以前の運営業者のもとでは感じられなかった好感が持てる確かなものであった。

プールの利用者には公共の場にふさわしくない行動をする者が老若男女問わずいる。滑りやすい通路を小走りする者、キャップを外して入浴する者、浴槽の出入り口付近を占拠する者、浴槽で潜る者など、数年たった今、そういう利用者に対してほぼ等しく優しくすべての監視員から指導が行われるようになった。以前の運営業者の監視員は、指導が下手だったしそもそも見て見ぬふりの監視員がほとんどで、指導したところで言いやすそうな利用者には言うけど、言いにくい強面の利用者には言わないムラだらけでお役人的なお粗末なものだったのだから、それに比べれば飛躍的に改善がなされたと言える。

しかし、先日こんなことがあった。

そのリーダー的な立場に見える監視員がロッカールームにかねて見かけない年配の男性と横並びでプール側から入ってきながら、丁寧な口調で「この部屋は寒く感じられませんか」といった会話が聞こえたので二人は以前上司と部下みたいな関係の知り合いだろうと思った。その年配の方は一度プールのエリアに入ってから何らかの理由で、ずぶ濡れの状態でロッカールームに戻ってきたらしく、フロアーはびちゃびちゃになってしまい私は靴下を濡らし不快な思いをした。

つまり、その模範的立場の監視員はその年配者に対し何も指導しなかったのである。その監視員はその年配者に忖度したのかは分からない。ずぶ濡れ状態に気付かなかったのか気付かないふりをしたのかそれも分からない。そもそも監視員が上履きのスリッパを履いているから濡れていようがヌルヌルしていようが気付かないのは確かだろう。その後びちゃびちゃのフロアーを誰が拭き上げるのだろう。もともと悪いのは公共の場をわきまえないその年配者である。どんなに歳食っていようが偉い方だろうが濡らした本人が負うべきことであり、それをしなかったその年配者は本当に情けない反面教師である。

ただ、当たり前ではあるが公共の場の監視員である以上、ある意味事務的に、誰に対しても等しく公正公平な態度や指導をして当然である。その上で年端の行かない年少者にはそれなりに、年配者にはまたそれなりの対応をするべきである。

ただ残念なのは、その期待していたリーダー的な監視員の態度が徐々に馴れ合いになり、それまでなかった親しく顔見知りの利用者には特別な挨拶をしたり、目に余る態度で接しつつあるように感じるのは私だけではないと思う。