(10) 絶えない転倒

 2016年7月10日、日曜日、夕方、スライダー側でタッチターンをする時に、異様な人の流れに気が付いた。子供も大人もプールから上がり始めていた。静まり返ったみんなの目線の先には、転倒し床の上に横たわる男性。その周りを監視員があわただしく動き回る。転倒した男性は後頭部から出血していた。顔に血の気がない。この異変に気付かず泳ぎ続けている人が二人いたので手首をつかみ教えた。こういう時は、全員プールから上がらせ温泉の浴槽側に集めることになっているらしい。転倒事故はよくあることだが、ここまで大騒ぎの事態は初めてである。幸い転倒した男性は意識はあるようで、同伴の子供さんの名前を聞き出すことができ、監視員がその名前を叫ぶ。が、周りのざわめきではっきりしない。でも、一人だけ異なる動きと表情で近づく子供さんがいた。この親子にとり、どれほどの心境の変化と乱れだっただろう。横たわったままの父親の手のひらが不安で今にも泣き出しそうな子供さんの頭を撫でる。この一瞬で周りもほっとしたはずだ。

やがて、監視員に付き添われた子供さんが、ロッカーから着替えや履き物などを抱えて横たわるお父さんのもとに戻り、ゆっくりお父さんが立ち上がり障害者用の出入り口に消えていった。

 

常日頃から、転倒者は多い。男女を問わず幼児や小学生、比較的若いお父さんやお母さんが多い。つるっと片足、もしくは両足を前に滑らせ、お尻やひじ、最悪は後頭部で着地のパターンである。筆者は幸い今まで滑ったことはない。滑りそうになったこともない。でも、滑りやすくなっているのはいつも同じ場所であることは分かっている。大げさかもしれないが濡れている床はどこもすべて滑りやすい。特に、来場者の多い日のシャワー室からタオルボックスにかけての通路、タオルボックスから自動シャワーにかけての通路。そして、床のヌルヌルが常態化しており、最も危険地帯なのが、人通りが集中する自動シャワーをくぐった直後から数メートル先までの一帯である。

いつ誰がこのヌルヌルを除去すべく清掃しているのだろう。と思わせるほどいつもヌルヌルしている。筆者はこれまで、あくまで夕方に限った時間帯でのことだが、この施設の清掃員や監視員がデッキブラシなどで、このヌルヌルを除去する行為を見たことがない。おそらく、営業の前後には清掃しているとは思うが、あくまで感覚的に判断すると、営業開始後、一定時間経過すると、菌の一種が増殖してヌルヌルが発生しているのだと思う。

また、清掃員も監視員もサンダル履きであるから、利用者側が感じているほどの素足のヌルヌル感は分からないのかもしれない。筆者は、そのヌルヌルに対し、滑るというよりも汚いとか不衛生さの方を感じる。明らかに掃除の手抜きが常態化している箇所もある。

 

水を流したり、低いところに溜まった水を掻き出す程度では事故は減らないと思う。危険を考えれば、放置できることではないので提案したい。監視員が一定時間ごとに行っている巡回時にはサンダル履きを止めて素足でヌルヌル感がないかを確認し、特に危険個所については重点的に定時にヌルヌル除去の処置をお願いしたい。