(1) ここふれあいスポーツランドで「公共」を意識させられ、そして「公共」を学ばせてもらっている。

筆者は恥ずかしながら50歳を前に、ここふれあいスポーツランドで「公共」を意識させられ、そして「公共」を学ばせてもらった。(進行形です。)

 

 

 

ここのプールに通うようになって10年あまりになる。勤めていた会社が倒産する3年ほど前からだったと記憶している。動機は、ダイエット。そのころは、景気が悪く、わりと早く帰れる日が作れた。つまり、プール終了時間(20時)までに1時間程度泳げる時間を確保できる時刻までに会社を離れられたのだ。営業成績は、胸を張れるほど良くはなかったが、他の営業よりはコンスタントな数字を挙げていたので上司や同僚に気兼ねはなかった。何より会社がその組織の体をなしていなかった。そのころは心情的にも懐具合的にも、他人を誘って飲みに行く気も起きなかったし、もちろん仕入先や上司、同僚から誘われることもなくなっていた。

 

 

 

平日に行ける日は、会社帰りに直行し、休日も、ほぼ欠かさず通った。

 

最初のころは、自己流のクロールで25mを2往復するのがやっとで、たびたび、プールの端で休みを入れなければならなかった。だから、長く続けて泳ぐ人が、タッチターンして私を置き去りにしていく。だから、初心者の私は邪魔な存在となり泳ぐタイミングを失って、悔しさを覚え、同時に憤りすら感じた。

 

 

 

まずは、どのレーンで泳げばいいのか。それが公共を意識した最初だった。しばらく通うようになってからようやく、各レーンに上級者用、中級者用とか右側通行とか、長く泳ぐ人優先とか書いてある札を見つけるのである。

 

 

 

いろんな目的で、いろんなレベルの人がプールを利用している。いわゆる選手コースの若い人たちも、お風呂代わりのお年寄りも、親が付き添いさえすれば赤ちゃんもだ。譲り合いが何よりなのだ。

 

 

 

2レーンある上級者コースと中級者コースは、事実上、ゆっくりと長く泳ぐ人が優先されることになる。何故なら、ゆっくり長く泳ぐ人が一人でもいるレーンでは、たとえ速く長く泳げる人であっても、前にゆっくり泳ぐ人を、追い越しながら泳ぐというのは、かなりの体力と野太い心が必要で、たとえ追い越すだけの体力や心があったとしても、対向者の妨げになるので無理なのだ。また、上級、中級者コースでは、クイックターンやタッチターンの邪魔もしてはならない。だから、レーンの端で休む場合、他の泳者がクイックターンやタッチターンで壁を蹴るために、どちらかの壁を空けてあげなければならない。ついでに、もちろんのことだがコースの途中で立ち止まり、後から来る泳者の泳ぎを妨げてはならないのである。例えば、この上級、中級者コースに幼児が入り込んできたら、直ちに監視員が騒ぎ出すのである。

 

このように利用者どうしでトラブルにならないように気遣ったり、監視員から咎められないように事実上の暗黙の了解的なルールを理解するには、恥をかきながら数か月かかった。積極的に聞かない限り、誰も教えてくれないし、気休め程度の利用上の説明や忠告文があることに気付いたのは、だいぶ経ってからだった。つまり、利用者とトラブルになったり、なりかけたり、かつ、監視員から咎められたりを繰り返して初めて理解できたのだと思う。公共の場とは、そういうものなのである。